皆さんは「マズローの欲求5段階」説をご存知ですか? 米国心理学者アブラハム・マズローにより唱えられた有名なこの「自己実現理論」は、人間の欲求には 5つの段階があり、下位のニーズが満たされることにより上位のニーズ充足に向けた行動をとる、という 説です。
【第一段階:生理的欲求】
生きてくために不可欠な欲求。
食物摂取・睡眠・排泄など。このニーズが満たされないと人間は生きていくことができない、 という根源的な欲求。
【第二段階:安全欲求】
安心・安全・安定に対する欲求。経済面・健康面・ 住環境面、あるい犯罪・暴力などへの安全欲求。
【第三段階:社会的欲求(所属と愛の欲求)】生理的欲求・安全欲求が満たされると、第三段階の「社会的欲求」が登場する。 人とのつながり(集団への所属)や愛情(恋愛・友情・家族形成)を求める欲求。
【第四段階:尊厳欲求】
社会的欲求が満たされると、次はその「社会から認められたい」という欲求が発現する。 また「他者尊厳欲求」と「自己尊厳欲求」に二分されるとも言っている。
【第五段階:自己実現欲求】
第四段階までの欲求が満たされると、最後はこの自己実現欲求まで至ることになる。 「自分らしい」「自分にしかできない」人生を送り、夢を実現したいという強い欲求。
この自己実現理論は現在に至るまでマーケティングにも活用されてきました。マーケティング的な見地 からすると、「売ろうとしているモノ」がどの段階の欲求を満たす商品なのかで基本的なマーケティン グミックスは異なってくるのです。マーケティングミックスとは市場ニーズを検討し、「4P」で総称される4つのファクターを最適化させる戦略を指します。
・PRODUCT(製品戦略)
・PRICE(価格戦略)
・PLACE(販売経路・場所)
・PROMOTION(販売促進策)
ファッションアイテムは「尊厳」「自己実現」カテゴリー
たとえば洋服やアクセサリーといった「ファッション」アイテム。 マズローの5段階では第4段階の「尊厳欲求」あるいは第5段階「自己実現欲求」に属する商品です。 多くの人々にとっては「自分らしさ」を他者に発信する代表的な「尊厳欲求」「自己実現欲求」カテゴリーです。 しかも、理屈抜きに「欲しい!」と思う典型的なウォンツ商品。 従ってメーカー・広告代理店は4Pをフル活用することになります。「年齢」「性別」「職業」「好み」 「体形」「収入」「ライフスタイル」など細分化したデータを駆使してターゲットをカテゴライズし、 そのグループに最適な4Pを決定し実行します。 昨年のモデルを陳腐化して今年の流行を作り出し、メーカーと広告代理店が生みの親である「今年の流行色で新たな欲求(ウォンツ)を生み出す。「全米で大流行」を前面に打ち出し日本人のDNAに100年 を超えて刷り込まれている「舶来志向」を思い切り刺激します。その結果、男女を問わず、「自分さしさ」や「他者からの認知」を求めて他人から説得されるまでもなく自ら購買行動に走ることになる。 「モノ」を対象とする販売戦略は人々の「欲」をベースに「ニーズ」「ウォンツ」を顕在化させること が重要になります。
保険はどのカテゴリーか?
一方、保険商品はどうでしょうか?
えっ? そんなこと、どうでもいいじゃないかって?
そうなことないですよ。とても重要なことです。是非考えてみてください。きっとあなたは、あとになって「ここを抜きには保険販売が語れない」ことを認識するはずです…。
「あの保険が売れている」と言う場合、売れている理由はどのようなものでしょう? 街でたまたま保険のパンフレットを見かけ、理屈抜きに欲しいと思って「衝動加入しちゃった!」 なんてことはあまり想像できません。決してウォンツ商品ではない保険商品は、考えただけでワクワク するファッションやクルマと同様に4Pを駆使した販売戦略が立案できるのでしょうか? 購入者から見た「商品の差異性認識」が難しく、商品によってはライフサイクルが超長期にわたる保険商品販売には、「他社からのスイッチング」を促す有効な4Pは存在するのでしょうか? 簡単に答えが出る問題ではありませんね。 ただ、ここでいくつか「まあ、そうだろうな・・・」と言えることがあります。
①生命保険も損害保険も、そのことを考えて「ワクワクする人」は少ないだろうということ
②1つあれば十分だ、と思うこと(そもそも自動車・火災は1つしか入れない)
③売り手が思っている以上に顧客は「どの商品も大差ない」と思っていること
④「安全欲求」段階の商品なので、ニーズの多様性に限界があり創りだしにくいこと
⑤従って商品の独自性を出しにくいこと
⑥フィンテック活用は従来型ビジネスモデルを否定する恐れがあり、抜本的に取り組みにくいこと
⑦商品情報はライバル会社間でそれほどの時間差なく流通すること
⑧従って商品の差異性は、存在するとしても「一時的なもの」となりやすいこと
あなたの戦略・戦術・行動力が全て
現時点において保険市場はファッションほど細分化したセグメントはできないし、結果として販売促進策をメーカーのように構築することが難しい業界であるはず。つまり往々にして営業戦略も似たような答えが導きだされることになると考えられます。私は保険会社の本社機能は「商品をつくること」「手数料を支払うこと」「販売環境をアップデートさせること」の3つに集約されると考えています。そしてあなたの業績を左右する肝心な部分である「誰に」「何を」「どう売るか」…。 これは保険会社の政策ではなく、顧客接点にいる「売り手自身の戦略・戦術・行動力の問題」です。そして、 ここで考えなくてはならないことは下記のことです。 「ある保険会社がイメージ戦略も成功していて市場シェアも高い」ということと、「あなた(売り手) の営業成績が向上する」ということには、それほど高い相関関係はないということ。 このことは肝に銘じなくてはいけません。特にメーカーに勤務している人材が保険営業に転職する 場合には注意が必要です。どんなに保険会社のTV宣伝が好印象でも、その恩恵は星の数ほどある保険 代理店・保険営業マンに共有されることとなり、「あなただけ」が「よりよく売れる」理由にはなりま せん。
安全欲求カテゴリーで戦いを挑む!
では、あなたがより高い実績を実現するには何が必要でしょうか? それこそが、この「保険販売サバイバル塾」の目的であり、これから共に考えていくテーマなのです。 そして、あなたも… 自己実現理論の第2段階「安全欲求」カテゴリーである生保・損保商品で、あなたはこれから、あなた自身の人生を切り開こうとしています。その活動があなたの人生を第5段階の「自己実現」に導くのか、 「安全欲求」をぎりぎり満たすもので終わるのか? 今はわかりません。 マズローが言うように欲求は順次駆け上がっていくのでしょう。 人間の欲求はそういう構造に出来上がっているのだと思います。 あなたが「保険販売」に自己実現の道を見出せたとき、きっと保険販売において第5段階まで辿り着く ことができるはずです。 つまりは・・・
実現したい夢や欲望の具体性&大きさ・強さ次第
ということになりそうです。 これまでの人生より、新たに選択したこれからの時間がより実りの多い財産となるよう、あなたがこのビジネスに真摯に向き合えることを祈念してやみません。